2杯目 学生証

 68年に日本を出た時、私は本物の学生証を持っていた。
 洋の東西を問わず(南北でも)学生は優遇される、社会人では許されない事が学生だからで許される、そればかりではない、入場料、見学料、切符等色々なところで差がつく、こうなると社会人は面白くない、学生になりたくってしょうがない、そこへ目を付けた輩が偽学生証を売る事になる。
 68年当時、5ドルぐらいで世界中の好きな大学の学生になれた、日本人でオックスフォードとかケンブリッジに留学する者はいなかった、私の知る限り日本の大学それもN大学が多かった、当時の貧乏旅行者の大半はN大学の学生だったんではなかろうか。今はどうなんだろうか?いまさら学生を騙ろうとは思わないのでよくは知らないが、バンコックではプレスカードなどと共に売っている、さすが昔のぺらぺらな紙ではなく今時の物だ、ただあの売り方は気に食わない、道端に看板を出して他の土産物と共に並んでいる、ああいう物はコソコソ売買するからこそ価値(?)があるのであって堂々と売られるのはいただけない、もしかしたら本物の土産物なのかもしれない、誰か知っている人がいたら知らせてほしい、あれは偽の学生証なのか本物の土産物なのかを。

 ある国から飛行機で出国しようとした、陸路の出国でも良かったんだがその時間、苦労を考えると学割の使えるその国の飛行機を使った方がより良いのは判り切っている、それにその時はそんなに貧乏というわけでもなかった。ただ、ちょっと私の学生証には問題があった、文頭にも書いたように偽物ではない、本物ではあるが発効日が数年も前のものだ。ある国の日本大使館へ証明書を書いてくれる様頼みに行った事があるが、発行日から1年なら証明しなくもないがそれ以上は学生だと言われてもねぇ、退学してるかも知れないしと断られた経験がある。1度は諦めたが今度こそと学生証を手に大使館へ行き、「この学生証は本物である。」との証明を書いてくれる様頼んだ「この者は学生である。」ではない、この願いはすぐに叶った、意気揚揚と航空会社へ行った、案の定「この学生証は本物である。」故に「この者は学生である。」と解釈してくれた、そして何日か後に快適な空の旅を楽しんだのはいうまでもない、某航空会社の皆様ごめんなさい。


 誤解されると困るので説明をしておく。

 私は知人達には高卒で大学には行っていないと言っている、履歴書にも高卒としか書かない、じゃあ上記の学生証とは高等学校のものなのか?、いや大学なのだ、何だか話がややこしくなるが大学は大学でも通信教育なのだ。
 通信教育でもちゃんと卒業すればお情けか金の力で卒業するよりましだろう?、って、それが誤解なのだ、私は勉学に励みたくて通信教育の学生になったのではなく学生という身分が必要だったのだ、当時私は東北地方の特殊な職場で働いていた、その特殊な職場と学生が大いに関係があるのだ、おかげで学生になる為に払ったお金の何倍もの恩恵に預かった、私は日本にいる時から学生証を最大限に悪用(どうも私のPCは漢字変換に問題がある、正解は利用)していたのだ、利用法の詳細をここに書いてしまうと実行するふとどき者が現れるのは間違いないので書けない、これも「貧乏人の財テク」と同様、メールでの問い合わせにも答えるわけにはいかない。

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