第17話 行方不明

 1968年暮れ頃、どうも私は行方不明となっていたらしい、今手元には外務省からの「消息調査について」という私の両親から出された依頼の返事がある。私は行く先々ではがきを出していたような気がするが、そうではなかったようだ。もっとも一文なしの時には切手なぞ買う金はないので出せるはずがないが、切手で思い出した事がある、私は切手を舐めて貼る、その切手に味があるのである、どこの国がどうとは今では忘れてしまったが、ドイツの切手は甘かった。各国を旅行することがあったら切手を舐め比べてみてほしい、それぞれ味があるはずである、ドイツ人が辛党になっていなければ今でもドイツの切手は甘いはずである。行方不明の話に戻ろう、1968年暮れには私は貧乏という程でもなかった、現に返事の中でT/C300ドル他を持っている、多分はがきを長いこと書かなかったんだろう。

 消息不明という人がどれほどいるか知らないが、大使館などで「掲示板?」に貼られた「尋ね人」みたいなやつをかなり見たような気がする、安宿の「掲示板」にもあった。こういう事にならないよう注意をしよう、今は電話なりインターネットで手軽に連絡ができるのだから。

 当時の両親及び関係各省の皆様には多大なる御迷惑をおかけしました事をお詫び致します。


 

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